会社をつくる
設立直後の法人口座|バーチャルオフィスの住所でも作れるのか
法人を作った直後、最初につまずくのが銀行口座です。実績がないぶん個人より審査は厳しく、しかも落ちた理由は教えてもらえません。とくに本店をバーチャルオフィスにしていると不安になります。ここは推測が飛び交う領域なので、銀行が自分のサイトに何を書いているかと、運営者自身の法人2社で実際にどうだったかだけを書きます。
住信SBIネット銀行は2026年8月3日に「ドコモSMTBネット銀行」へ商号変更しました。口座番号・支店番号・金融機関コードは変わりません。ただし他行から振り込む際に旧行名で受け付けてもらえるのは2026年10月30日までです。請求書の振込先欄を旧名のままにしているなら、いま直してください。まだ旧名で書いている比較記事が多いので注意が必要です。
設立直後がなぜ厳しいのか
法人になれば信用が上がる、と思われがちですが、口座開設に限っては逆です。銀行が見ているのは法人格ではなく事業の実態で、設立直後はそれを示す材料がほとんどありません。取引実績もなければ、決算書もない。
銀行側の事情もあります。法人口座は振り込め詐欺やマネーロンダリングに使われるため、金融機関には犯罪収益移転防止法にもとづく確認義務があります。実態のない法人に口座を出すと、銀行自身が問われる。だから「事業が本当に存在するか」を示せるかどうかが審査の中心になります。
これを逆から読むと、準備すべきものがはっきりします。審査に通る会社と落ちる会社の違いは、規模でも業種でもなく、事業をやっていることが外から見えるかです。具体的には、サイトがあるか、連絡先がつながるか、何で売上を立てるのかが説明できるか。設立直後でもこれは用意できます。
バーチャルオフィスだと通らないのか
ここが一番、根拠のない話が流通しているところです。「バーチャルオフィスだと100%落ちる」と書いているページもあれば「まったく問題ない」と書いているページもあります。どちらも出典がありません。
そこで、銀行が自分のサイトに何を載せているかを見ました。
ドコモSMTBネット銀行は、自社の法人向けページでバーチャルオフィス事業者を6社紹介しています。DMMバーチャルオフィス、レゾナンス、オフィスゼロワン、アントレサロン、ワンストップビジネスセンター、NAWABARI。シェアオフィスとしてNIKKEI OFFICE PASSも並んでいます。
ただし「バーチャルオフィスの住所で口座を開設できます」とは書かれていません。事業者を紹介しているだけです。ここは正確に読む必要があります。
それでも、この事実から言えることはあります。銀行が自社の法人向けページにバーチャルオフィス事業者を並べているということは、少なくとも「バーチャルオフィスを使う法人」を顧客として想定しているということです。住所だけで門前払いする方針なら、自分のサイトに導線を作る理由がありません。
運営者自身の実例
このサイトの運営者が関与する法人2社は、いずれもレゾナンスの住所で登記し、ドコモSMTBネット銀行(旧・住信SBIネット銀行)で法人口座を開設しています。
つまり「バーチャルオフィスの住所では法人口座が作れない」は、少なくともこの組み合わせでは成立しません。2社とも通っています。
ただし、この実例から言えることの範囲は限っておきます。言えるのは「この銀行とこのバーチャルオフィスの組み合わせで、開設できた例が2件ある」までです。すべての銀行で通るという話ではないし、審査は法人ごとの事情を見るので、同じ住所なら必ず通るという保証にもなりません。
それでも、「作れない」という断定が反証されているのは意味があります。住所を理由に諦める必要はない、というところまでは確実に言えます。
そして住所そのものより、事業の実態が示せるかのほうが効いていると読むのが自然です。バーチャルオフィスで落ちた事例が実在するのも事実でしょうが、それが住所のせいだったのか、実態を示す材料が足りなかったのかは、外からは区別できません。落ちた理由は開示されないので、誰も因果を確かめられない。「バーチャルオフィスだから落ちた」という話は、ほぼすべてが推測です。
なお、口座開設より前の段階として、バーチャルオフィスを選ぶときに登記できるプランを選べているかは確認しておいてください。各社が広告で出す最安プラン(550〜660円)は、その多くが法人登記に使えません。
2行の条件を実数で並べる
設立直後に候補になりやすい2行について、公式ページに書かれている条件だけを並べます。
| 項目 | GMOあおぞらネット銀行 | ドコモSMTBネット銀行 |
|---|---|---|
| 開設までの期間 | 最短即日(代表者と取引責任者が同一で、マイナンバーカード読取による本人確認の場合) | 最短翌日から利用可能(オンライン口座開設) |
| 本人確認書類 | 取引責任者の本人確認書類1点(運転免許証・運転経歴証明書・マイナンバーカード・在留カード・特別永住者証明書のいずれか)。その他はアップロードまたは郵送 | 「必要書類は運転免許証だけ」と記載 |
| 口座維持手数料 | 公式ページに記載なし | 無料(利用料も無料と明記) |
| 他行宛振込 | 他行宛 99円〜(振込料金とくとく会員適用時)/当行宛 無料 | 他行宛 最安130円(税込、優遇プログラム適用時) |
| バーチャルオフィス | 公式ページに記載なし | 自社ページでVO事業者6社を紹介。ただし開設可否の明記はなし |
| 備考 | ― | 旧・住信SBIネット銀行(2026年8月3日に商号変更) |
振込手数料の差は1件あたり31円です。月に20件振り込むなら年間で7,440円の差。小さくはありませんが、口座が開かないことのコストに比べれば誤差です。設立直後に最適化すべきは手数料ではなく、まず決済手段を持つことです。
どの順番で申し込むか
審査に落ちても、落ちた事実が他行に共有されるわけではありません。ただし短期間に何行も申し込むのは得策ではないので、順番を決めて進めます。
オンラインで完結し、口座維持手数料がかからず、最短で即日〜翌日に使えます。設立直後に必要なのは「入金と支払いができる状態」であって、対外的な信用はこの段階ではまだ使い道がありません。
決算を1期でも通し、入出金の履歴ができてから申し込むほうが通ります。信用金庫は地域との関わりを重視するため、事業内容が地域に結びつくなら先に当たる価値があります。
理由は開示されないので、推測して同じ銀行に再申請しても改善したか分かりません。サイトを用意する、連絡先を整える、取引の予定を説明できるようにする。そのうえで審査基準の異なる系統(都市銀行で落ちたならネット銀行、逆も同様)に申し込みます。
口座の前に、登記する住所が決まっている必要があります。住所を決める→登記する→口座を申し込む、の順です。住所で迷って止まると全部が止まるので、ここは先に片付けてください。登記できるプランの最安は月990円です。
ドコモSMTBネット銀行が自社ページで紹介している6社のうちの1社で、運営者が関与する法人2社が実際に登記に使っているのもここです。
まとめ
- 住信SBIネット銀行は2026年8月3日にドコモSMTBネット銀行へ商号変更。旧行名での振込受付は2026年10月30日まで。請求書の振込先欄を確認する。
- 設立直後の審査で見られているのは法人格ではなく事業の実態。サイト・連絡先・売上の説明が材料になる。
- ドコモSMTBネット銀行は自社の法人向けページでバーチャルオフィス6社を紹介している。ただし「VO住所で開設できる」とは書いていない。
- 運営者が関与する法人2社は、レゾナンスの住所で登記し、この銀行で口座を開設している。「バーチャルオフィスでは作れない」はこの組み合わせでは成立しない。ただし全銀行で通る保証ではない。
- 設立直後に最適化すべきは手数料ではなく、決済手段を持つこと。手数料の差は年7,440円(月20件の場合)。
出典
- GMOあおぞらネット銀行 公式サイト 法人のお客さま ― https://gmo-aozora.com/business/(2026年9月21日確認)
- ドコモSMTBネット銀行 公式サイト 法人のお客さま/バーチャルオフィス連携 ― https://www.netbk.co.jp/contents/hojin/(2026年9月21日確認)
- 商号変更および旧行名での振込受付期限は、同行のプレスリリースおよびお知らせによる
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律(取引時確認義務)