個人事業主とひとり法人、手取りの損益分岐はどこか|利益おおむね500万円未満は個人・800〜1,000万円超で法人へ傾く【2026年9月】
同じ事業利益でも、個人のままか、法人を作って役員報酬を取るかで、手元に残る額は変わります。分かれ目は、事業利益がおおむね500万円未満なら個人事業主が有利になりやすく、給与所得控除・所得分散・消費税の免税リセットが法人の固定費を上回って法人へ傾くのは、おおむね800万〜1,000万円を超えるあたり。ただし前提の置き方で大きく動きます。個別の確定計算や税務判断はしません。金額は前提を固定した概算で、確定は税理士に確認してください。
- 事業利益がおおむね500万円未満のうちは、個人事業主が手取りで有利になりやすい。法人には赤字でもかかる均等割 年7万円、社会保険料の増加、税理士報酬といった固定費があり、少ない利益ではこれを回収しきれないため。
- 法人有利へ傾くのは、事業利益がおおむね800万〜1,000万円を超えるあたりから(目安)。個人事業主が使えない給与所得控除(役員報酬に対して最大195万円)、家族などへの所得分散、資本金1,000万円未満の新設法人で最大2期の消費税免税、退職金の退職所得控除が、固定費を上回ってくるため。
- 分岐点は前提で大きく動く。社会保険料の水準、家族への給与分散、退職金の設計、インボイス登録の有無で数百万円ぶん前後する。ここに挙げるのは前提を置いた概算で、確定は税理士へ。
この試算の前提
税と社会保険は前提で結果が動きます。以下では次の前提で説明します。前提を変えると分岐点も動くので、あわせて読んでください。
- 所在地
- 東京都(法人住民税・法人事業税は標準税率で計算。自治体により超過税率があります)
- 年齢
- 40歳未満(介護保険の第2号被保険者ではない前提)
- 家族構成
- 単身・家族従業員なしを基本シナリオとします(家族への給与分散は「なぜ法人で手取りが増えるのか」で別に扱います)
- 収入
- 事業所得だけが収入という前提です。会社員が本業の給与を持ちながら副業で法人を作る場合は、事業の利益が本業給与に上乗せされて所得税の限界税率が上がり、社会保険も本業側で加入済みのため、この分岐・固定ケースはそのまま当てはまりません(社会保険の扱いは社会保険料と役員報酬、役員報酬を取らない選択は役員報酬を0円にすると)
- 個人側の控除
- 青色申告特別控除 65万円を使える前提青色申告特別控除65万円は電子申告・電子帳簿保存などの要件つき。今回の一次確認(2026-09-26)の対象定数には含まれておらず、当サイトが保持している値です。損益分岐に効く重要な変数のため、確定額としてではなく前提として扱っています
- 資本金
- 1,000万円未満(消費税の新設法人特例の対象。資本金1,000万円以上だと1・2期目とも課税事業者になります)
- 法人の区分
- 資本金1億円以下・外形標準課税の対象外(法人事業税の所得割税率と特別法人事業税37%はこの前提です。令和7年4月以降の減資特例で例外がありますが、ひとり法人では通常非該当)
- 基準年
- 税は令和7年分の料率・控除、社会保険料は令和8年度の料率(税の年分と社保の年度は別制度です)。後述のとおり基礎控除には時限措置を含みます
個人事業主にかかる税金と社会保険
個人事業主は、事業所得(売上−経費−青色申告特別控除)をもとに、次の税と社会保険を負担します。給与所得控除は使えません。これがひとり法人との最大の違いになります。
所得税(超過累進・7段階)+復興特別所得税
課税所得(事業所得から基礎控除などの所得控除を引いた額)に、次の速算表を当てます。税額=課税所得×税率−控除額です。
| 課税所得の区分 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 〜 1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 〜 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 〜 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 〜 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 〜 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 〜 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
これに加えて、復興特別所得税=基準所得税額×2.1%(令和19年/2037年分まで)が上乗せされます。
住民税・個人事業税
- 個人住民税 所得割
- 標準税率 10%(道府県民税4%+市区町村民税6%/政令指定都市は2%+8%で合計は同じ10%)。前年の所得に対して翌年度に課税されます。住民税の課税所得は所得税と別計算で、住民税側の基礎控除額は所得税とは異なります。その基礎控除額は今回の一次確認の対象外のため、金額は本文に出さず「別途一次確認が必要」に留めます
- 個人住民税 均等割+森林環境税
- 合計 5,000円/年(住民税均等割4,000円+森林環境税〈国税〉1,000円)。自治体により超過分の上乗せがある例があります。
- 個人事業税
- 課税標準=(事業所得+青色申告特別控除の足し戻し)−事業主控除290万円。税率は業種別で3〜5%(第1種=物販・製造・請負・飲食・不動産貸付等5%、第2種=畜産・水産・薪炭製造4%、第3種=医業・士業・デザイン・コンサル等は原則5%、あんま・はり・きゅう・柔道整復等は3%)。所得290万円以下は非課税。法定70業種に該当する事業だけが課税対象です。法定70業種への該当は事業の実態と所轄の都道府県税事務所の判断で分かれ、同じ職種でも課税・非課税が異なり得るため、判定は所轄で確認してください。青色申告特別控除は事業税では控除できず足し戻す点にも注意が必要です。
社会保険(国民健康保険+国民年金)
個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入します。国民健康保険には所得に応じた賦課上限(限度額)があるため、所得が高いほど負担割合は頭打ちになります。役員報酬を0円にすると、代わりに何がいくら来るかで、前年所得別の国民健康保険料の実額を出しています。
ひとり法人にかかる税金と社会保険
ひとり法人では、同じ事業利益を「役員報酬(給与として個人に出す分)」と「会社に残す利益」に分けます。それぞれに別の税がかかります。
会社側にかかる税
| 税目 | 税率・金額 | 補足 |
|---|---|---|
| 法人税 | 所得800万円以下 15%/800万円超 23.2% | 本則19%を租税特別措置で15%(令和9年3月末までに開始する事業年度まで)。所得10億円超の事業年度は800万円以下部分が17%。国税庁 No.5759 |
| 地方法人税 | 法人税額 × 10.3% | 国税。100円未満切捨て |
| 法人住民税(均等割) | 年 7万円 | 資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の最低区分。赤字でも課税 |
| 法人住民税(法人税割) | 法人税額 × 7.0%(標準税率) | 自治体により超過税率あり |
| 法人事業税(所得割) | 400万円以下 3.5%/400万円超800万円以下 5.3%/800万円超 7.0% | 標準税率。支払った期または翌期の課税所得を圧縮(損金算入) |
| 特別法人事業税 | 法人事業税の所得割額 × 37% | 国税。法人事業税と併せて都道府県へ申告納付 |
上の税率から中小法人の法定実効税率を導くと、所得800万円以下でおおむね約23〜26%、800万円超で約34%前後になります(法人事業税の損金算入を考慮した近似)。ただし実効税率そのものは一次情報の定数ではなく、上の税率からの計算値です。本文では確定した税率(15%・23.2%・10.3%・7.0%・3.5〜7.0%・37%)を根拠として使い、実効税率は目安としてのみ扱います。
役員個人側にかかる税と社会保険
役員報酬は給与なので、個人事業主が使えない給与所得控除を差し引いてから、所得税と住民税がかかります。令和7年分以後の給与所得控除は次のとおりです。
| 役員報酬(給与収入) | 給与所得控除 |
|---|---|
| 190万円以下 | 65万円(最低保障) |
| 190万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
さらに厚生年金・健康保険に労使折半で加入します。ひとり法人では会社負担分も本人負担分もどちらも自分の会社から出ますが、会社負担分は法人の損金になります。報酬別の実額は社会保険料と役員報酬のページにまとめています(例:報酬月30万円・東京都・40歳未満で労使合計 年1,034,640円)。
基礎控除(所得税・令和7・8年分)
個人・法人どちらの側でも、個人の所得税では基礎控除が引けます。令和7・8年分は次のとおりです。
| 合計所得金額 | 基礎控除 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超 336万円以下 | 88万円 |
| 336万円超 489万円以下 | 68万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 63万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 58万円 |
この95万円・88万円・68万円・63万円は令和7・8年分限定の上乗せで、令和9年分以降は合計所得2,350万円以下で一律58万円に戻ります。合計所得2,350万円超の帯は段階的に減りますが、確認度が中で、ひとり法人の通常の所得帯では非該当のため、ここでは載せていません(注意点)。
なぜ法人化で手取りが増える場合があるのか
法人が有利になり得る理由は、主に次の4つです。いずれも「利益が一定以上あるとき」に効く点が共通しています。
- 給与所得控除が使える
- 個人事業主は事業所得に給与所得控除を使えませんが、法人にすると同じお金を役員報酬(給与)で受け取れるため、給与所得控除(最大195万円)を差し引けます。ただし同じ額を会社に残せば法人税(15〜23.2%)が、給与にすれば社会保険料(労使合計でおよそ3割)がかかります。差し引きの損得は役員報酬の決め方のとおり、会社側と個人側の負担が釣り合う点で決まります。
- 所得分散
- 利益を「会社に残す分」と「役員報酬」に分け、さらに家族を役員・従業員にして報酬を分けると、一人に集中する累進課税を下げられます(勤務実態など要件があります)。
- 消費税の新設2期免税リセット
- 資本金1,000万円未満の新設法人は、基準期間がないため原則として設立1・2期目が消費税の免税事業者になり得ます。個人時代の売上とは基準期間が切れるため、法人成りで仕切り直せます。ただしインボイス登録をすると免税メリットは消え、課税事業者選択・特定新規設立法人に当たる場合も対象外です。また、設立1期目の上半期(6か月)の課税売上高または給与等の支払額が1,000万円を超えると、2期目は課税事業者になります(特定期間の判定)。役員報酬を高めに取る設計では2期目の免税が消えやすい点に注意してください。
- 退職金(退職所得控除)
- 会社に残した利益を、将来、役員退職金として受け取ると、退職所得控除と2分の1課税により税負担が軽くなりやすい形があります。ただし役員としての勤続年数が5年以下だと、退職所得の2分の1課税は使えません(特定役員退職手当等)。退職金・退職所得控除の具体的な金額は今回の一次確認の対象外のため、ここでは仕組みの説明に留めます
役員報酬の決め方(最適化の考え方)
ひとり法人の手取りは、同じ事業利益を役員報酬Rと会社に残す利益にどう割り振るかで変わります。考え方の芯は、会社側と個人側の「最後の1円」の限界負担が釣り合う点が最適ということです。
- Rを上げると、給与所得控除でRの一部が実質無税になり、会社に残る利益が減って法人の負担も下がります。
- 一方でRの限界には、個人の所得税の累進+住民税所得割10%+社会保険料(労使合計でおおむね3割)が乗ります。ただし社会保険料には標準報酬月額の上限があり、将来の年金給付が増える面もあります。
- 一般には、生活費を賄う水準まで役員報酬を取って給与所得控除と低い累進帯を使い、余剰を法人税15%の区分で会社に残す形が取られます。ただし最適な金額は各人の生活費・家族構成・社会保険の設計で変わるため、実際の金額は税理士に確認してください。残した利益は将来の退職金や設備・投資に回せます。
役員報酬は金額そのものだけでなく、事業年度開始から3か月以内に決める(定期同額給与)という手続きの制約があります。この期限を過ぎると、その期はもう金額を動かせません。金額の設計と手続きの期限はセットで考えてください。
個人 vs 法人 手取り比較(固定ケース)
ここまでの税率・控除と社会保険料を実際に積み上げ、事業利益(売上−経費)が400万円・700万円・1,000万円の3ケースで、個人事業主のままの手取りと、ひとり法人にして役員報酬を取った場合の総可処分(役員個人の手取り+会社に残る税引後利益)を並べます。下の数字は前提を固定した概算の手計算で、前提を変えると分岐点も金額も動きます。役員報酬は各ケースで生活費を賄える水準を1つ置いた例で、手取りが最大になる金額を探したものではありません。
| 事業利益売上−経費 | 個人事業主の手取り | 法人+役員報酬の総可処分 | 差額法人−個人 |
|---|---|---|---|
| 400万円役員報酬 300万円/年 | 3,020,184円 | 2,744,946円 | −275,238円 |
| 700万円役員報酬 480万円/年 | 4,834,467円 | 4,833,047円 | −1,420円 |
| 1,000万円役員報酬 600万円/年 | 6,558,986円 | 6,964,608円 | +405,622円 |
この前提での試算では、事業利益400万円だと法人化で総可処分はむしろ年275,238円ほど下がり、700万円ではほぼ拮抗(差 1,420円で、ほとんど変わらない)、1,000万円で約405,622円のプラスへ転じます。均等割 年7万円・社会保険料・法人各税・会計ソフト等の維持費といった法人の固定費を、給与所得控除と会社への利益留保が上回ってくる分岐が、この試算ではおおむね700万円前後にあります。ただし上の表は自分で申告する前提(会計ソフト 年5万円)で、決算・申告を税理士に頼むと年20万円前後の固定費が加わり、法人有利へ傾く分岐点は800万〜1,000万円へ上がります。金額そのものは前提しだいで動くため、当たりをつける材料として見てください。
- 税額は実効税率を使わず、法人税15%/23.2%・地方法人税10.3%・法人住民税(均等割7万円+法人税割7.0%)・法人事業税3.5〜7.0%・特別法人事業税37%・所得税の速算表+復興特別所得税2.1%を、上の表の税率で1つずつ積み上げた概算です。
- 住民税の所得割は、簡便のため基礎控除を所得税と同じ43万円で近似しています(住民税側の基礎控除額は今回の一次確認の対象外のため)。実際は所得税と別計算で、金額はわずかに変わります。
- 個人側は青色申告特別控除65万円・国民健康保険(東京23区・令和8年度)・国民年金 年215,040円、法人側は役員報酬に対する厚生年金・健康保険(協会けんぽ東京都・令和8年度)で計算し、会社負担分の社会保険料は会社の損金にしています。
- 個人側は第1種事業(税率5%)の個人事業税を課しています。IT・執筆など法定70業種に当たらない事業は個人事業税が0円になり、その場合は個人側がさらに有利へ動きます(700万円のケースは有利・不利が入れ替わり得ます)。
- 法人側には会計ソフトなどの維持費 年5万円を固定費として入れています(自分で決算・申告する前提)。税理士に頼むと年20万円前後が上乗せになり、法人有利へ傾く分岐点はそのぶん上がります。
- 「総可処分」に含めた会社に残る税引後利益は、配当や役員退職金として取り崩す段階で追加の課税があり、個人の手取り現金と1円=1円で等価ではありません。退職所得控除を使える退職金なら軽くなりますが、この表は取り崩し時の税を引く前の金額です。
- 法人事業税の損金算入(翌期の所得を圧縮)、消費税、退職金、家族への所得分散、繰越欠損、各種所得控除といった個別事情は含めていません。これらを入れると差額はさらに動きます。個別の確定計算は税理士に確認してください。
事業利益を入れて、手取りの差を試算する
事業利益と役員報酬を入れると、個人事業主のままの手取りと、ひとり法人にして役員報酬を取った場合の総可処分、その差額を、上の固定ケースと同じ式で計算します。税率・社会保険料・法人住民税の均等割は令和7年分の所得税・令和8年度の社会保険料で固定した目安です(東京都・青色申告特別控除65万円・個人事業税は第1種5%・法人は会計ソフト等 年5万円)。役員報酬の取り方しだいで結果は動くので、大きな差が出たら税理士に一度確認してください。JavaScriptが使えない環境では、上の固定ケースの表を見てください。
役員報酬が事業利益に近すぎます会社に残る利益がマイナスになるため、この概算は目安から外れます。役員報酬を下げると、上の固定ケースに近い水準の試算になります。
個人事業主の内訳
- 事業所得(利益−青色65万円)
- —
- 国民健康保険
- —
- 国民年金
- —
- 所得税+復興特別所得税
- —
- 住民税
- —
- 個人事業税(第1種5%)
- —
- 手取り
- —
ひとり法人の内訳
- 役員報酬
- —
- 社会保険料(労使合計)
- —
- うち会社負担(損金)
- —
- 会社の税(法人税・住民税ほか)
- —
- 会社に残る税引後利益
- —
- 役員個人の所得税+住民税
- —
- 役員個人の手取り
- —
- 総可処分(役員手取り+会社残余)
- —
総可処分に含めた「会社に残る税引後利益」は、配当や役員退職金として取り崩す段階で追加の課税があり、個人の手取り現金と1円=1円で等価ではありません。この試算は前提を固定した概算です。前提を変えると分岐点も金額も動きます。確定は税理士に確認してください。
役員報酬をいくらにすると社会保険料がどう動くか、報酬を0円にすると代わりに何が来るかは、実額を次のページにまとめています。上の試算の社会保険料も、この実額から計算しています。
報酬月10万〜80万円の年額を実額で。報酬を下げても年267,204円で止まる下限まで。役員報酬の3か月ルールもここ。
国民健康保険は前年所得で決まり、法人成り1年目は下がりません。前年所得別の実額を掲載。
損益分岐の目安と、分岐が動く理由
ここまでの税と社会保険を並べると、損益分岐の目安はこう整理できます。いずれも前提を置いた概算で、確定は税理士に確認してください。
- 事業利益がおおむね500万円未満のとき。法人の均等割 年7万円・社会保険料の増加・税理士報酬という固定費を、少ない利益では回収しきれません
- 売上の見込みが不安定で、毎月同額の役員報酬を払い続けにくいとき
- 消費税でインボイス登録が実質必須の取引先ばかりで、法人化しても免税メリットが出ないとき
- 事業利益がおおむね800万〜1,000万円を超えるあたりから。給与所得控除・所得分散・消費税の免税リセットが固定費を上回ってきます
- 家族に給与を分散できる実態があるとき
- 会社に利益を残して将来の退職金に回す設計ができるとき
この2つの金額は、上に挙げた税率・控除額(国税庁・総務省などで1件ずつ確認したもの)を当サイトが組み合わせて概算したモデルの目安で、税率そのもののように公式ページで確認した確定値ではありません。計算過程と数値は固定ケースの手取り比較に出していますが、前提を変えれば動きます。分岐は、①社会保険料の水準、②家族への給与分散の有無、③退職金設計、④消費税の課税/免税判定で数百万円ぶん前後し、前提が違えば有利・不利は逆転し得ます。だからこそ金額の断定を避け、前提の明示を先に置いています。個別の判断は税理士に確認してください。
よくある誤解と注意点
- 時限措置は基礎控除の上乗せだけ
- 基礎控除の上乗せ(95/88/68/63万円)は令和7・8年分限定で、令和9年分以降は合計所得2,350万円以下で一律58万円に戻ります。一方、給与所得控除の最低65万円・上限195万円は令和7年分以後の恒久措置で、時限ではありません。試算は基礎控除の年分だけ切り替える必要があります。
- 個人事業税は全業種ではない
- 法定70業種に該当する事業だけが課税対象です。業種に当たらない場合は非課税になり得ます。青色申告特別控除は事業税では控除できず足し戻します。
- 自治体で税率が違う
- 法人住民税の均等割・法人税割、法人事業税は自治体により超過税率があります(東京都など)。掲載は標準税率です。所在地の税率を確認してください。
- 外形標準課税の前提
- 特別法人事業税37%・法人事業税3.5〜7.0%は「資本金1億円以下=外形標準課税対象外」を前提にしています。令和7年4月以降の減資特例で例外がありますが、ひとり法人では通常非該当です。
- 消費税のインボイス
- インボイス登録済みなら免税メリットは消えます。登録事業者向けの2割特例や、基準期間の課税売上5,000万円以下で使える簡易課税を別途検討してください。
- 住民税の基礎控除・実効税率
- 住民税の課税所得は所得税と別計算で、住民税側の基礎控除額は今回の一次確認の対象外のため本文では金額を出していません。法定実効税率(約23〜26%/約34%)も税率からの導出値で、確定額ではなく目安です。
- 高い給与収入の調整控除
- 給与収入850万円超では、扶養や障害などの要件を満たすと所得金額調整控除が別途受けられる場合があります。給与収入660万円未満は本来、法律の別表にもとづく計算ですが、この記事は速算式で近似しています。
よくある質問
個人事業主と法人、どちらが得かは利益いくらが分かれ目ですか。
目安として、事業利益がおおむね500万円未満のうちは個人事業主が有利になりやすく、おおむね800万〜1,000万円を超えるあたりから法人が有利へ傾きやすい、という整理になります。ただしこれは前提を置いた概算です。社会保険料の設計・家族への所得分散・退職金・消費税の課税/免税判定で分岐点は大きく動くため、確定は税理士に確認してください。
なぜ法人にすると手取りが増えることがあるのですか。
主な理由は4つです。個人事業主が使えない給与所得控除(役員報酬に対して最大195万円)を使えること、利益を役員報酬と会社に残す利益に分けて所得を分散できること、資本金1,000万円未満の新設法人で最大2期の消費税免税が使えること、会社に残した利益を将来の退職金として受け取ると退職所得控除が効くことです。いずれも利益が一定以上あるときに効きます。
役員報酬はいくらに設定するのが得ですか。
考え方の芯は、会社側と個人側の「最後の1円」の限界負担が釣り合う点が最適、というものです。一般には、生活費を賄う水準まで役員報酬を取って給与所得控除と低い累進帯を使い、余剰を法人税15%の区分で会社に残す形が取られますが、最適な金額は生活費・家族構成・社会保険の設計で変わるため、税理士に確認してください。金額は事業年度開始から3か月以内に決める必要があります(定期同額給与)。
このページで個人と法人の手取りを比較できますか。
固定ケース(事業利益400万・700万・1,000万円)で、個人事業主の手取りとひとり法人の総可処分、その差額を実際に積み上げて表にしています。東京都・40歳未満・青色申告特別控除65万円などの前提を固定した概算で、前提を変えると分岐点も金額も動きます。同じページに、事業利益と役員報酬を入れて手取りの差を出す概算の計算機もあります。前提を変えると分岐点も金額も動くため、確定は税理士に確認してください。
掲載の税率はいつ時点のものですか。
所得税の速算表・給与所得控除・基礎控除・個人住民税・個人事業税・法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税の免税判定は、いずれも2026年9月26日に国税庁・総務省・東京都主税局の各ページで確認しています。料率は年度・自治体・業種で変わるため、出典の各リンクで最新をご確認ください。
法人化のデメリットは何ですか。
法人成りのタイミングはいつがよいですか。
目安としてよく使われるのは、事業利益がおおむね800万〜1,000万円を超えてきたとき、または課税売上高が1,000万円を超えて消費税の課税事業者になる見込みが立ったときです。新しく法人を作れば資本金1,000万円未満で最大2期は消費税の免税を受けられるため、売上が伸びる直前に設立すると効きます。維持費や社会保険料もかかるため、確定は税理士に確認してください。
参考にしたページと検証の流れ
税率・控除額は、下の各公式ページの記載を2026年9月26日に確認して掲載しています。実効税率などの導出値と、一次確認の対象外の値(住民税の基礎控除額など)は、確定値として本文に出さず注記に留めています。
- 所得税の速算表(7段階)・復興特別所得税2.1% ― 国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率 nta.go.jp(2026年9月26日確認)
- 給与所得控除(令和7年分以後・最低65万円/上限195万円) ― 国税庁 タックスアンサー No.1410 給与所得控除 nta.go.jp(2026年9月26日確認)
- 基礎控除(所得税・令和7年分/令和8年分) ― 国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について nta.go.jp(2026年9月26日確認)
- 個人住民税 所得割 標準税率10% ― 総務省 個人住民税 soumu.go.jp(2026年9月26日確認)
- 個人住民税 均等割+森林環境税 合計5,000円 ― 総務省 個人住民税/森林環境税及び森林環境譲与税 soumu.go.jp(2026年9月26日確認)
- 個人事業税(業種別3〜5%・事業主控除290万円) ― 東京都主税局 個人事業税 tax.metro.tokyo.lg.jp(2026年9月26日確認)
- 法人税率(中小法人・年800万円以下15%/超23.2%) ― 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率 nta.go.jp(2026年9月26日確認)
- 地方法人税(法人税額×10.3%) ― 国税庁 地方法人税の税率の改正のお知らせ nta.go.jp(2026年9月26日確認)
- 法人住民税(均等割 年7万円・法人税割 標準7.0%) ― 総務省 法人住民税 soumu.go.jp(2026年9月26日確認)
- 法人事業税 所得割(3.5/5.3/7.0%・標準税率) ― 総務省 法人事業税 soumu.go.jp(2026年9月26日確認)
- 特別法人事業税(所得割額×37%) ― 総務省 地方法人課税資料 soumu.go.jp(PDF)(2026年9月26日確認)
- 消費税 免税事業者の判定(基準期間1,000万円・特定期間・新設法人の資本金1,000万円・特定新規設立法人・インボイス登録) ― 国税庁 タックスアンサー No.6501 納税義務の免除 nta.go.jp(2026年9月26日確認)