ひとり法人の社会保険料は年1,034,640円|均等割(標準税率70,000円)の14.8倍が毎年かかる【2026年11月】
会社を作るといくらかかるかを法定費用で比べると、合同会社60,000円、株式会社は約167,000円からです。ただし設立の翌月から毎月出ていく固定費は、それよりはるかに大きくなります。役員が自分ひとり、報酬を月30万円にした場合、健康保険と厚生年金で年1,034,640円。法人住民税の均等割70,000円(標準税率、最高は横浜市の年74,500円)の14.8倍です。会社負担分と本人負担分に分かれますが、ひとり法人ではどちらも自分の財布から出ます。
- 役員が自分ひとり・報酬を月30万円にすると、健康保険と厚生年金で年1,034,640円。会社負担分と本人負担分に分かれるが、ひとり法人ではどちらも自分の財布から出る。
- 個人事業のときの国民年金+国民健康保険から、法人の厚生年金+健康保険に変わる。これが法人化で増える固定費の中心。法人住民税の均等割 年70,000円(標準税率、最高は横浜市の年74,500円)の14.8倍にあたる。
- 報酬を下げても社会保険料は年267,204円で下げ止まり、0にはならない。役員報酬の額は設立から3か月以内に決め、その期はもう動かせない。
報酬別の年額
東京都・協会けんぽ・40歳未満(介護保険の第2号被保険者でない)で計算しています。使った料率は健康保険9.85%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%、子ども・子育て拠出金0.36%です。
| 役員報酬(月) | 健康保険+支援金 | 厚生年金 | 拠出金 | 月の合計 | 年の合計 | うち会社負担 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 100,000円 | 10,080円 | 18,300円 | 360円 | 28,740円 | 344,880円 | 174,600円 |
| 200,000円 | 20,160円 | 36,600円 | 720円 | 57,480円 | 689,760円 | 349,200円 |
| 例300,000円 | 30,240円 | 54,900円 | 1,080円 | 86,220円 | 1,034,640円 | 523,800円 |
| 500,000円 | 50,400円 | 91,500円 | 1,800円 | 143,700円 | 1,724,400円 | 873,000円 |
| 800,000円 | 80,640円 | 146,400円 | 2,880円 | 229,920円 | 2,759,040円 | 1,396,800円 |
40歳から64歳は介護保険料1.62%が加わります。報酬月30万円なら月91,080円、年1,092,960円で、40歳未満より年58,320円増えます。
法定費用60,000円と社会保険料の年1,034,640円は、桁が2つ違います。設立時に1円単位で節約する対象は前者ですが、事業を続けるかどうかの判断に効くのは後者です。設立費用のページにも、この金額を含めた初年度の総額を載せています。
役員報酬から社会保険料を計算する
役員報酬の月額を入れると、健康保険・厚生年金・子ども子育て拠出金を、本人負担・会社負担に分けて計算します。協会けんぽ東京都・令和8年度の料率です。標準報酬月額は本来は等級表で区切りますが、この計算では入力した報酬月額をそのまま使った概算です。
報酬0円のときの扱いは、年金事務所が個別に判断します「0円なら加入しない」と決めた条文はありません。実務では被保険者資格を取らない扱いが通り、その場合は国民健康保険と国民年金に切り替わります。ただし金額だけを理由にした線引きは日本年金機構が否定しているので、決める前に管轄の年金事務所に確認してください。切り替わった場合の実額は役員報酬を0円にすると、代わりに何がいくら来るかを見てください。
| 項目 | 本人(月) | 会社(月) | 合計(月) |
|---|
健康保険料率9.85%+子ども子育て支援金0.23%(+介護1.62%)、厚生年金18.3%、子ども子育て拠出金0.36%(会社が全額)。労使折半の端数処理により本人と会社の額が1円ずれることがあります。金額は概算です。
法人が加入義務を負う条文
健康保険法第3条第3項第2号は、適用事業所を「国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの」と定めています。厚生年金保険法第6条第1項第2号も同じ文言です。
条文だけを読むと、従業員がいない会社は対象外に見えます。ただし法人の代表者や役員も、法人から労務の対償として報酬を受けている場合は「法人に使用される者」として被保険者になります。役員が自分ひとりで従業員がいなくても、報酬が出ていれば適用事業所に該当します。「従業員の有無は関係ない」という説明は、条文の文言とは食い違います。報酬を受ける役員が「使用される者」に当たる、という理解が実態に合います。
このページの前身にあたる設立後の届出には、当初「法人は強制適用事業所で、従業員の有無は関係ありません」と書いていました。条文の文言と逆だったため、上のとおり書き直しています。
- 届出の名称
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届/被保険者資格取得届
- 提出先
- 管轄の年金事務所
- 期限
- 事実の発生から5日以内(健康保険法施行規則第19条第1項、厚生年金保険法施行規則第13条第1項)。健康保険法第48条・厚生年金保険法第27条が届出義務を定め、日数は施行規則で決まっています。
- 添付書類
- 登記事項証明書。登記が完了するまで取れません。東京法務局の公表値では完了まで13日から39日かかるため、5日以内に揃わない場合があります。日程の問題として書いています。
役員報酬を0円にした場合
実務では、報酬を0円にすると被保険者資格を取らない扱いが通ります。ただしそう決めた条文はありません。健康保険法・厚生年金保険法の適用除外の条には、報酬の額を理由にした号が1つもなく、資格を報酬に結び付けているのは通知のほうです(条文を数えた結果)。実際の扱いは年金事務所が実態を見て決めます。資格を取らない扱いになり、従業員もいなければ、新規適用届も不要です。ただし失うものがあります。
| 項目 | 報酬を出す(月30万円) | 報酬0円 |
|---|---|---|
| 加入する制度 | 健康保険・厚生年金 | 国民健康保険・国民年金 |
| 年金保険料 | 658,800円労使合計 | 215,040円国民年金・令和8年度 |
| 医療保険料 | 362,880円労使合計 | 前年所得で決まる法人成り1年目は個人事業時代の所得で計算されます |
| 将来の年金 | 基礎年金+報酬比例部分 | 基礎年金のみ |
| 傷病手当金・出産手当金 | 制度上はありただし報酬を受けられる期間は支給されません(健康保険法第108条第1項)。定期同額給与を払い続ける限り、実際には受け取れません | なし国民健康保険には原則ありません |
| 法人の損金 | 役員報酬が損金になる | 損金がないぶん法人税の課税所得が増える |
| 生活費の出どころ | 役員報酬 | 役員貸付金・個人資産など別の手当てが要る |
役員報酬は事業年度開始から3か月以内に決めたら、その事業年度中は原則として変えられません(下の定期同額給与)。0円で始めると、定期同額給与として損金にできる改定は翌事業年度の開始から3か月以内です。期の途中で増やすこと自体はできますが、増やした部分は損金になりません。
また、報酬を0円にした場合の被保険者資格の扱いは、年金事務所が個別に判断します。非常勤役員や報酬が著しく低い場合も同様です。金額を決める前に管轄の年金事務所と税理士に確認してください。
0円にした場合に代わりに来る国民健康保険料の実額、役員貸付金の認定利息、使えなくなる控除枠は役員報酬を0円にすると、代わりに何がいくら来るかで扱っています。
報酬を下げても年267,204円で止まる
社会保険料は標準報酬月額に料率を掛けて計算します。標準報酬月額には下限があり、健康保険の第1等級は58,000円(報酬月額63,000円未満に適用)、厚生年金の第1等級は88,000円(報酬月額93,000円未満に適用)です。報酬をそれより下げても、保険料は下限の等級で計算されます。
報酬月額を健康保険の第1等級に当たる水準(報酬月額63,000円未満)まで下げた場合でも、健康保険5,846円+厚生年金16,104円+拠出金317円=月22,267円、年267,204円がかかります。加入している限り、これより下がりません。
役員報酬は事業年度開始から3か月以内に決める
役員に払う給与は、原則として損金になりません(法人税法第34条第1項)。損金にできるのは、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに当たる場合だけです。ひとり法人で使うのはほぼ定期同額給与です。
- 定期同額給与
- 毎月同じ額を支給するもの。金額の改定は事業年度開始の日の属する会計期間の開始の日から3か月を経過する日までに行う必要があります(法人税法施行令第69条第1項第1号イ)。期の途中で増やすと、増えた部分が損金になりません。
- 設立1期目
- 設立の日が事業年度の開始日なので、設立から3か月以内に決めることになります。
- 事前確定届出給与
- 役員賞与を損金にする場合に使います。届出の期限は株主総会の決議日から1か月を経過する日と、会計期間開始から4か月を経過する日の早いほう。ただし新設法人が設立時に開始する職務について定める場合は、設立の日以後2か月を経過する日です(法人税法施行令第69条第4項第1号)。
- 期中に減らせる場合
- 職制上の地位の変更などやむを得ない事情(臨時改定事由)と、経営状況が著しく悪化した場合(業績悪化改定事由)に限られます(同項ロ・ハ)。業績悪化による改定は減額のみです。
設立後の届出一覧には期限のある手続きが並びますが、金額の影響が最も大きいのはこの3か月です。税務署に何かを提出する期限ではないため、一覧に載らず見落とされます。届出の一覧とあわせて日程に入れてください。
毎年やってくる手続きと、賞与の上限
設立時の届出が済んだあと、社会保険には毎年の定例と、報酬を変えたときの手続きがあります。
- 定時決定(算定基礎届)
- 毎年7月1日現在の被保険者について、4月から6月に受けた報酬の平均で標準報酬月額を決め直します(健康保険法第41条、厚生年金保険法第21条)。届出は7月1日から7月10日まで。役員1人でも提出します。
- 随時改定(月額変更届)
- 固定的な報酬が変わり、その後3か月の平均が標準報酬月額の等級と著しく差を生じた場合に改定します(健康保険法第43条、厚生年金保険法第23条)。役員報酬を事業年度の初めに変えたときは、ここに当たることがあります。
- 賞与を出す場合の上限
- 標準賞与額には上限があります。健康保険は年度(4月1日から翌年3月31日)の累計で573万円(健康保険法第45条第1項ただし書)、厚生年金は1か月あたり150万円(厚生年金保険法第24条の4第1項)。上限を超えた部分には保険料がかかりません。
役員賞与を事前確定届出給与にするかどうかは、法人税の損金算入の話として説明されることが多い項目です。社会保険の側から見ると、厚生年金の標準賞与額に1か月150万円の上限があるため、月々の報酬を下げて賞与に寄せると保険料の総額が変わります。どちらが有利かは報酬の水準で逆転するため、配分を決める前に税理士と社会保険労務士に確認してください。
役員は労災保険の対象外。2024年11月から特別加入できる
労災保険は労働者のための制度で、法人の代表者や役員は労働者に当たりません。仕事中にけがをしても労災保険の給付は受けられません。
健康保険法第53条の2は、法人の役員としての業務に起因する傷病に保険給付を行わないと定めています。ただし同条の括弧書きで「被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員としての業務」は除かれています。ひとり法人はこれに当たるため、業務中のけがでも健康保険の給付を受けられます。
つまり特別加入の値打ちは「給付がゼロの状態を埋める」ことではなく、自己負担3割がなくなることと、休業補償が付くことにあります。
従来の特別加入制度(中小事業主等)は、労働者を使用していることと労働保険事務組合への委託が要件だったため、従業員が1人もいないひとり法人の代表者は使えませんでした。2024年11月1日から、特定受託事業者(フリーランス)の特別加入が新設され、代表者1人の法人も対象になりました。
- 根拠
- 労働者災害補償保険法施行規則第46条の17第12号。特定受託事業者が業務委託事業者から業務委託を受けて行う事業が、特別加入の対象になりました。
- ひとり法人の代表者が対象になるか
- 特定受託事業者は「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」を含みます(フリーランス法第2条第1項第2号)。役員が代表者1人だけで従業員がいない法人は、この定義に当てはまります。同条第2項により、特別加入するのはその法人の代表者です。
- 保険料
- 給付基礎日額×365×保険料率(1000分の3)。日額は3,500円から25,000円の範囲で選びます。日額10,000円なら年10,950円、日額3,500円なら年3,831円です。
- 加入方法
- 特別加入団体を通じて手続きします。団体の事務手数料が別にかかります。
- 対象外になる場合
- 消費者からのみ業務を受託している場合など、対象にならない形態があります。役員が2人以上いる法人も特定受託事業者に当たりません。
年10,950円で、休業補償と療養補償が付きます。社会保険料の年1,034,640円と比べると小さい金額ですが、制度の存在自体が知られていないため、制度の存在自体があまり知られていません。
2社から報酬を取る場合は10日以内に届出
複数の法人の役員を兼ね、それぞれから報酬を受けると、どちらか一方の年金事務所を選択して届け出る必要があります。
- 届出の名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」です。
- 期限は二以上の事業所に使用されるに至った日から10日以内(健康保険法施行規則第2条、厚生年金保険法施行規則第1条第2項)。
- 標準報酬月額は両社の報酬を合算して決定され、保険料は報酬の割合で各社に按分されます。
- 選択した事業所の管轄年金事務所が、以後の窓口になります。
2社目を作る場合の論点は2社目・3社目を作るときに変わることにまとめています。
法定費用の5パターンに加えて、設立費用に入らない社会保険料・均等割・会計ソフトまで含めた初年度の総額を出しています。
税務署・都道府県・市区町村・年金事務所。最短は社会保険の5日以内。役員報酬の3か月もここに入れています。
資本金の額が消費税・均等割・許認可に効く境目と、あとから変える費用。
よくある質問
ひとり法人でも社会保険に入らないといけませんか。
役員報酬を出していれば入ります。法人は従業員がいなくても強制適用事業所で、報酬を受ける役員は被保険者になります。加入しない選択はできません。報酬が0円の場合は、実務では被保険者資格を取らない扱いが通りますが、そう決めた条文はなく、年金事務所が実態を見て個別に判断します。その扱いになると、代わりに国民健康保険と国民年金の保険料が来ます(役員報酬を0円にすると、代わりに何がいくら来るか)。
役員報酬を下げれば社会保険料は下がりますか。
途中までです。標準報酬月額には下限があり、それより下げても保険料は下限の等級で計算されます。報酬をいくら下げても年267,204円で止まります。
役員報酬はいつまでに決めればいいですか。
事業年度開始の日から3か月以内です(法人税法施行令第69条第1項第1号イ)。この期限を過ぎると、その事業年度中は金額を動かせません。期の途中で増やすこと自体はできますが、増やした部分は損金になりません。
役員は労災保険に入れますか。
原則として対象外です。ただし2024年11月1日から特定フリーランス事業に係る特別加入の制度が始まり、条件を満たせば加入できます。保険料は給付基礎日額に応じて決まり、1,000円未満は切り捨てます。
傷病手当金はもらえますか。
制度上はありますが、実際には受け取れないことが多くなります。健康保険法第108条第1項により報酬を受けられる期間は支給されません。定期同額給与を払い続ける限り、その期間は報酬を受けられる状態だからです。
参考にしたページ
- 健康保険法第3条第3項第2号(適用事業所)・第48条(届出)・第53条の2(法人の役員である被保険者に係る保険給付の特例。被保険者5人未満の適用事業所の役員としての業務は除外)・第108条第1項(報酬を受けられる期間は傷病手当金を支給しない) ― e-Gov 健康保険法
- 厚生年金保険法第6条第1項第2号(適用事業所)・第27条(届出) ― e-Gov 厚生年金保険法
- 健康保険法施行規則第19条第1項(新規適用事業所の届出・5日以内)・第2条(二以上の事業所に使用される場合の選択の届出・10日以内) ― e-Gov 健康保険法施行規則
- 厚生年金保険法施行規則第13条第1項(新規適用事業所の届出・5日以内)・第1条第2項(選択・10日以内) ― e-Gov 厚生年金保険法施行規則
- 全国健康保険協会「令和8年度の都道府県単位保険料率」(東京都 9.85%・令和8年3月分から/介護保険料率 1.62%/子ども・子育て支援金 0.23%・令和8年4月分から) ― 協会けんぽ(2026年9月22日確認)
- 厚生年金保険料率 18.3%(平成29年9月分から固定)/子ども・子育て拠出金率 0.36%(令和8年度も据置)/国民年金保険料 月17,920円(令和8年度) ― 日本年金機構(2026年9月22日確認)
- 健康保険法第41条(定時決定)・第43条(改定)・第45条第1項ただし書(標準賞与額の上限 年度累計573万円)/厚生年金保険法第21条(定時決定)・第23条(改定)・第24条の4第1項(標準賞与額の上限 1か月150万円)
- 法人税法第34条第1項(役員給与の損金不算入)、法人税法施行令第69条第1項第1号イ(定期同額給与の改定は会計期間開始から3か月を経過する日まで)・第4項第1号(事前確定届出給与の届出期限。新設法人は設立の日以後2か月を経過する日) ― e-Gov 法人税法施行令
- 労働者災害補償保険法施行規則第46条の17第12号(特定受託事業者の特別加入。2024年11月1日施行) ― e-Gov 労災保険法施行規則
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第2条第1項第2号・第2項(法人であって一の代表者以外に他の役員がなく従業員を使用しないもの) ― e-Gov フリーランス法
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