会社をつくる
会社設立の費用は結局いくらか|株式会社と合同会社を1円単位で並べる
会社設立の費用は「株式会社で20万円くらい、合同会社で6万円くらい」とよく言われます。この「くらい」の中身は、法令で金額が決まっている項目の足し算です。決まっているものを並べれば、いくらになるかは推定ではなく計算になります。そして2024年12月に、条件を満たせば手数料が半額になる制度が始まっています。
結論:4パターンの総額
法定費用(国や公証役場に必ず払うもの)だけを足すと、こうなります。専門家に依頼する場合の報酬は含みません。
| パターン | 定款認証 | 謄本 | 収入印紙 | 登録免許税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| ▸ 合同会社・電子定款最も安い | ― | ― | 0円 | 60,000円 | 60,000円 |
| 合同会社・紙の定款 | ― | ― | 40,000円 | 60,000円 | 100,000円 |
| 株式会社・電子定款半額条件に該当・資本金100万円未満 | 15,000円 | 約2,000円 | 0円 | 150,000円 | 約167,000円 |
| 株式会社・電子定款資本金300万円以上 | 50,000円 | 約2,000円 | 0円 | 150,000円 | 約202,000円 |
| 株式会社・紙の定款資本金300万円以上 | 50,000円 | 約2,000円 | 40,000円 | 150,000円 | 約242,000円 |
幅は60,000円から約242,000円まで、3.2倍あります。差を作っているのは3つだけです。①合同会社か株式会社か ②紙の定款か電子定款か ③定款認証の半額条件に当てはまるか。順に見ます。
紙で定款を作ると、印紙税法により4万円の収入印紙が要ります。電子定款(PDFに電子署名したもの)なら不要です。これは合同会社でも株式会社でも同じで、4万円がまるごと消えるため、ここを外すと他のどの節約より大きく損をします。
ただし電子署名の環境を個人でそろえるのは手間がかかります。会社設立サービスや司法書士が電子定款に対応しているなら、その手数料が4万円より安いかどうかで判断してください。
定款認証が1万5,000円になる条件
株式会社の定款認証手数料は、もともと一律5万円でした。2022年1月に資本金の額による3段階になり、2024年12月1日からさらに、条件を満たす場合に1万5,000円という区分ができています。2026年9月時点で施行中(令和6年12月1日施行)。
| 資本金の額等 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円未満下の3条件すべてに該当する場合 | 15,000円 |
| 100万円未満条件に該当しない場合 | 30,000円 |
| 100万円以上300万円未満 | 40,000円 |
| 300万円以上 | 50,000円 |
1万5,000円になるのは、次の3つすべてに該当する場合です。条文の文言のまま引きます。
- 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること
- 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること
- 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと
くわえて資本金の額等が100万円未満であることが前提です。「未満」なので、100万円ちょうどは対象外です。
ひとりで会社を作る場合、①はまず満たします(自分ひとり=自然人1人)。②と③も、ひとり法人の標準的な定款ならそのまま当てはまります。取締役会は取締役が3人以上いないと置けないので、ひとりなら③も自動的に満たします。つまり資本金を100万円未満にすれば、ひとり法人はほぼ確実に1万5,000円になります。
逆に言うと、資本金を100万円にした瞬間に手数料が4万円になり、2万5,000円増えます。資本金99万円と100万円の差は1万円ですが、手数料の差は2万5,000円です。ここは知らないと踏みます。
費用の内訳と、なぜその額なのか
登録免許税
設立登記のときに国に納める税金です。計算式は資本金の額 × 1000分の7で、これが最低額に満たない場合は最低額になります。最低額は株式会社が15万円、合同会社が6万円です。
| 会社の種類 | 最低額 | 計算式 | 最低額を超えるのは資本金が |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 150,000円 | 資本金 × 0.7% | 約2,143万円超 |
| 合同会社 | 60,000円 | 資本金 × 0.7% | 約857万円超 |
ひとり法人の資本金がこの水準を超えることはまれなので、実務上は最低額の15万円または6万円で固定と考えて差し支えありません。
謄本(同一の情報の提供)
認証した定款の写しをもらう費用です。1枚につき250円で、日本公証人連合会の説明では「おおむね8枚2000円くらい」とされています。枚数は定款の分量で変わるため、上の表では約2,000円としています。
収入印紙
紙の定款に貼る4万円です。電子定款なら不要。会社の種類によらず同じなので、合同会社でも紙で作れば4万円かかります。
資本金をいくらにすると税額が上がるか
資本金の額は、設立費用だけでなく、その後の税金にも効いてきます。設立時に決める数字のうち、あとから変えにくいわりに影響が大きい項目です。
| 資本金 | 何が変わるか |
|---|---|
| 100万円未満 | 定款認証手数料が1万5,000円になりうる(上の3条件に該当する場合) |
| 1,000万円未満 | 設立から一定期間、消費税の納税義務が免除される場合がある(他の要件あり) |
| 1,000万円以下 | 法人住民税の均等割が最も低い区分になる |
| 1億円以下 | 法人税の軽減税率や各種中小企業向けの特例の対象になりうる |
消費税の免税や法人税の特例は、資本金だけでなく前々事業年度の売上、給与の支払額、設立からの経過期間など複数の要件で決まります。このサイトは制度の存在と境目の数字までを書きますが、個別の会社でどうなるかは書きません。そこは税理士の領域です。資本金の額を決める前に一度相談しておくと、あとで直せない失敗を避けられます。
株式会社と合同会社、どちらにするか
費用の差は、電子定款を使う前提で107,000円から142,000円です。この差を払う価値があるかどうかで決まります。
受託開発、オンライン完結のサービス、取引先が限られている事業。設立費用が60,000円で済み、決算公告の義務もありません。役員の任期もないので、数年ごとの重任登記(そのたびに登録免許税がかかる)が発生しません。
株式を発行して資金を調達する仕組みは株式会社にしかありません。また、取引先の与信や購買のルールで「株式会社であること」を条件にしている会社が実在します。該当しそうなら、あとから組織変更するより最初から株式会社のほうが安く済みます。
合同会社から株式会社への組織変更はできますが、登録免許税と官報公告の費用がかかり、設立費用の差額より高くつくことが多いです。1〜2年以内に株式会社にする可能性が現実的にあるなら、最初から株式会社を選ぶほうが安くなります。
設立費用に入っていない出費
上の表は法定費用だけです。実際に会社を動かし始めるには、これ以外にも支出があります。設立の見積もりを作るときは、ここまで入れてください。
- 会社の印鑑 ― 代表者印(実印)は登記の際に必要です。銀行印・角印とセットで数千円から。会社印鑑の専門店で価格を見る
- 登記事項証明書と印鑑証明書 ― 口座開設や各種申請のたびに求められます。1通数百円。設立直後は複数通取ることになります。
- 本店所在地 ― 自宅にすれば0円ですが、登記した住所は公開情報になります。借りる場合はバーチャルオフィスで月990円から。
- 専門家報酬 ― 司法書士に登記を依頼する場合の報酬。自分でやれば0円ですが、書類の不備で法務局に往復すると設立日が後ろにずれます。書類作成だけを支援するサービスもあります(マネーフォワード クラウド会社設立/弥生の起業・開業ナビ)。
- 設立後の届出 ― 税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所への届出。書類代のみですが、期限があります。
最安プランは3社ほぼ同額。差は制限の中身と、上のプランに移るときの上昇率(+45%〜+161%)に出ます。
本店所在地は定款を作る前に決める必要があります。自宅にした場合に公開される情報と、あとから移すときの登録免許税3万円について。
銀行が自社サイトに何を書いているかと、運営者自身の法人2社で実際にどうだったか。
まとめ
- 法定費用の合計は60,000円(合同会社・電子定款)から約242,000円(株式会社・紙の定款)。差は3.2倍。
- 紙の定款は印紙代4万円が丸ごと乗る。電子定款にできるかを最初に確認する。
- 株式会社の定款認証は、資本金100万円未満+3条件で1万5,000円(2024年12月1日施行)。資本金100万円ちょうどは対象外で、4万円になる。
- 登録免許税は実務上、株式会社15万円・合同会社6万円で固定と考えてよい(資本金が約2,143万円/約857万円を超えなければ)。
- 資本金の額は設立費用だけでなく消費税や法人住民税にも効く。金額を決める前に税理士に一度確認する。
出典
- 公証人手数料令第35条(定款の認証の手数料)/日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」(2026年9月21日確認)
- 日本公証人連合会「定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか」(2026年9月21日確認)
- 登録免許税法 別表第一(株式会社の設立登記 資本金の額の1000分の7、15万円に満たないときは15万円/合同会社は6万円)
- 印紙税法 別表第一第6号(定款 4万円。電磁的記録による定款は課税文書に当たらない)