会社設立の手順と日程|申請日が設立日になるので、そこから逆算する
会社の設立日は、法務局に登記を申請した日です。登記が完了した日ではありません。つまり「10月1日設立」にしたいなら、10月1日に申請できる状態まで書類を揃えておく必要があります。定款の認証、印鑑証明書の取得、資本金の払込には順番があり、前の工程が終わらないと次に進めません。工程ごとの前後関係と所要日数を並べます。
設立までの7工程
株式会社の場合です。合同会社は工程5(定款認証)がありません。
| 順 | やること | 中身 | つまずく点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 本店所在地を決める | 自宅にするか借りるか。借りるなら契約と住所の確定まで。 | 定款に書くため、定款作成より前に確定している必要があります。バーチャルオフィスは申込から住所が使えるまでに審査があります。 |
| 2 | 商号・目的・資本金・決算期・役員を決める | 定款の記載事項。あとから変えると費用がかかります。 | 同じ住所に同じ商号の会社があると登記できません(商業登記法27条)。先に法務局または登記情報提供サービスで調べます。 |
| 3 | 発起人の印鑑証明書を取る | 市区町村の窓口またはコンビニ交付。 | 公証役場と法務局の双方で使います。発行から3か月以内のものが必要です。 |
| 4 | 定款を作る | 紙か電子か。電子なら印紙代40,000円が不要。 | 電子定款にはPDFへの電子署名が要ります。自分で環境をそろえるか、対応している事務所・サービスを使います。 |
| 5 | 定款の認証を受ける(株式会社のみ) | 公証役場。合同会社は不要。 | 案文を事前にメール等で送って確認してもらい、日時を予約します。事前の確認と予約に1〜2週間みてください。 |
| 6 | 資本金を払い込む | 発起人個人の口座へ。会社の口座はまだ作れません。 | 定款の作成日以後に払い込む必要があります。通帳の該当ページの写しが登記の添付書類になります。 |
| 7 | 法務局へ登記を申請する | 申請した日が会社の設立日になります。 | 書類に不備があると補正を求められ、その日数だけ設立日が後ろにずれます。 |
合同会社は定款の認証が不要です(会社法では株式会社についてのみ第30条が公証人の認証を要求しています)。公証役場に行く必要がなく、認証手数料15,000円〜50,000円もかかりません。設立費用が60,000円で済むのはこのためです。
登記日から逆算する
決算期を9月にしたいので10月1日に設立したい、という決め方をする人がいます。その場合の逆算です。日数は余裕を持たせています。
| 期限 | 終わらせること | 理由 |
|---|---|---|
| 3〜4週間前 | 本店所在地の確定 | バーチャルオフィスは申込から審査・契約・住所確定まで日数がかかります。自宅なら即日。 |
| 2〜3週間前 | 商号の調査、目的・資本金・決算期・役員の決定 | 同一住所・同一商号があると登記できません。先に調べます。 |
| 2週間前 | 発起人の印鑑証明書の取得 | 発行から3か月以内のもの。公証役場と法務局の両方で使います。 |
| 1〜2週間前 | 定款の作成と、公証役場への案文送付 | 公証役場は案文を事前に確認します。修正のやり取りが入ります。 |
| 3〜7日前 | 定款の認証(予約した日時) | 予約制です。当日に飛び込んで終わる手続きではありません。 |
| 1〜3日前 | 資本金の払込 | 定款の作成日以後であることが必要です。通帳の写しを添付書類にします。 |
| 当日 | 法務局へ登記申請 | この日が設立日になります。 |
| 申請の後 | 登記の完了を待つ | 完了するまで登記事項証明書が取れないため、法人口座の開設と各種届出はここから先になります。 |
登記の申請日が設立日になるので、土日祝は設立日にできません。月初を設立日にしたい場合、1日が土日だと翌営業日になります。オンライン申請でも、受付時間外の送信は翌開庁日の受付です。「1日設立」にこだわるなら、その月の1日が何曜日かを先に見てください。
定款を作る前に決めること
定款の記載事項のうち、あとから変えると費用と手間がかかるものです。設立前に決め切っておくほど、後の支出が減ります。
- 本店所在地
- 定款には最小行政区画(「東京都港区」など)までにしておくと、同じ区内の移転で定款変更が要りません。番地まで書くと、同じ区内で移るだけでも株主総会の特別決議が必要になります。詳しくは定款に本店を番地まで書かない。
- 商号
- 同一住所に同一商号があると登記できません(商業登記法27条)。バーチャルオフィスは1つの住所に多数の会社が登記されているため、ありふれた商号は当たる可能性があります。調べ方。
- 事業目的
- 許認可が要る事業は、目的に対応する文言がないと申請できません。将来やる可能性がある事業も入れておけますが、多すぎると口座審査で「何の会社か分からない」と見られます。
- 資本金の額
- 消費税の免税判定、法人住民税の均等割、許認可の要件、登録免許税に影響します。資本金をいくらにするかに整理しています。
- 事業年度(決算期)
- 設立日から最も遠い月末にすると1期目が最長になります。消費税の免税期間も伸びます。決算期の決め方。
- 発行可能株式総数
- 株式会社のみ。小さく設定すると増資のたびに定款変更と変更登記(登録免許税30,000円)が必要になります。非公開会社なら設立時発行株式の4倍という制限はありません(会社法37条3項ただし書)。
- 株式の譲渡制限
- 付けておくと取締役の任期を最長10年にできます。付けない(公開会社)と任期は2年で、2年ごとに重任登記(登録免許税10,000円)が発生します。
- 役員の任期
- 非公開会社は定款で最長10年にできます。長くすると重任登記の回数が減りますが、任期途中で解任すると損害賠償の対象になり得ます。
公証役場でやること(株式会社のみ)
定款の認証です。会社法第30条第1項により、株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません。合同会社にはこの規定がありません。
- 先に案文をメールやFAXで送り、公証人に確認してもらいます。記載に不備があればここで直します。
- 確認が済んでから、認証の日時を予約します。
- 認証の当日は、発起人本人または代理人が出向きます。テレビ電話による認証も制度としてあります。
- 手数料は資本金の額で変わります。資本金100万円未満で3条件を満たすと15,000円、100万円未満で条件を満たさない場合30,000円、100万円以上300万円未満で40,000円、300万円以上で50,000円(公証人手数料令第35条)。
- 紙の定款なら収入印紙40,000円が別に要ります。電子定款なら不要です。
法務局でやること
設立登記の申請です。申請した日が設立日になります。
- 窓口、郵送、オンラインのいずれでも申請できます。
- 登録免許税は資本金の額の1000分の7で、これに満たない場合は株式会社150,000円・合同会社60,000円が最低額です(登録免許税法別表第一24号(一)イ・ハ)。
- 書類に不備があると補正を求められます。補正で申請が受理し直しになると、設立日も変わります。
- 完了予定日は各法務局が公表しています。完了するまで登記事項証明書と印鑑証明書は取れません。
設立登記の申請時に、会社の実印(代表者印)を登記所に提出します。印鑑の作製には日数がかかるため、逆算のときに入れておいてください。銀行印・角印とセットで数千円からです。
登記の完了までは、東京でも13日から39日
設立サービスの多くは「2週間程度」と書いていますが、これは登記を申請するまでの日数です。申請したあと法務局が処理を終えるまでは別にかかります。法務局は申請日ごとの完了予定日を公表しており、同じ東京都内でも庁によって大きく違います。
| 申請する庁 | 完了予定日 | 申請日からの日数 |
|---|---|---|
| 最短江戸川出張所 | 10月1日 午後 | 13日 |
| 八王子支局・城南出張所 | 10月2日 午後 | 14日 |
| 府中支局・立川出張所 | 10月15日 午後 | 27日 |
| 品川・渋谷・世田谷出張所 | 10月21日 午後 | 33日 |
| 新宿出張所・港出張所 | 10月22日 午後 | 34日 |
| 本局 登記部門 | 10月27日 午前 | 39日 |
港区や渋谷区の住所で登記すると、管轄は港出張所や渋谷出張所になります。上の表の日付は申請した週によって動くので、申請前に東京法務局の登記完了予定日で最新を見てください。他の都道府県も各法務局が同じ形式で公表しています。
社会保険の新規適用届は事実の発生から5日以内です(健康保険法施行規則第19条第1項、厚生年金保険法施行規則第13条第1項)。事実の発生日は設立日、つまり登記を申請した日です。ところが添付書類になる登記事項証明書は、登記が完了するまで取れません。上の表のとおり、完了まで13日から39日かかります。
この5日を物理的に守れないケースが出るため、管轄の年金事務所に、登記事項証明書が間に合わない場合の取り扱いを先に確認してください。
登記が終わってから
登記が完了すると、登記事項証明書と法人の印鑑証明書が取れるようになります。ここから先が届出と口座開設です。
- 登記事項証明書と印鑑証明書を取る(1通600円/500円。届出のたびに取り直すと手数料がかさむので、3〜5通まとめて取ります)
- 年金事務所へ社会保険の届出(事実の発生から5日以内。一覧の中で最も短い期限です)
- 税務署・都道府県税事務所・市区町村へ届出(期限の一覧)
- 法人口座の開設を申し込む(設立直後の法人口座)
- 役員報酬を決める(事業年度開始の日から3か月以内。これを過ぎると1期目は損金にできません。定期同額給与)
日程が止まる場所
実際に遅れるのは書類作成より、待ち時間です。
- 住所が決まらない
- 本店所在地が決まらないと定款が書けず、定款が書けないと何も進みません。バーチャルオフィスは申込後に審査があり、即日では使えないことがあります。最安はMETSオフィスの月716円です(7社の比較)。
- 公証役場の予約が取れない
- 案文の事前確認と予約が要ります。月末・年度末は混みます。
- 印鑑証明書が古い
- 発行から3か月以内のものが必要です。早く取りすぎると取り直しになります。
- 資本金の払込が定款作成日より前
- 順番が逆だと払込の証明として認められません。やり直しになります。
- 商号が既にある
- 同一住所・同一商号は登記できません。法務局の窓口で分かるのは、定款認証と印紙代を払った後です。先に調べてください。
- 補正
- 書類の不備で法務局から連絡が入ります。往復した日数だけ完了が遅れます。
法定費用を5パターンで積み上げ。合同会社の電子定款が60,000円で最安。設立費用に入らない社会保険料と均等割も含めた初年度の総額を出しています。
資本金の額が消費税・均等割・許認可・登録免許税に効く境目。発行可能株式総数と譲渡制限をあとから変える費用。
税務署・都道府県・市区町村・年金事務所。最短は社会保険の5日以内。青色申告の承認申請を落とすと1期目の赤字を繰り越せません。
出典
- 会社法第30条(定款の認証)・第37条(発行可能株式総数の定め等)・第49条(株式会社の成立) ― e-Gov 会社法
- 商業登記法第27条(同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止) ― e-Gov 商業登記法
- 公証人手数料令第35条(定款の認証の手数料) ― e-Gov 公証人手数料令
- 登録免許税法 別表第一第24号(一)イ(株式会社の設立)・ハ(合同会社の設立) ― e-Gov 登録免許税法