備品を一度に経費にできるのはいくらまで?少額資産の3つの区分と特例
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ひとり法人の代表や個人事業主から、仕事用に買ったパソコンや机を、その年の経費にまとめてできないか、という相談がある。減価償却資産は原則として法定耐用年数にわたって少しずつ経費にするが、取得価額が小さいものには例外があり、いくらで買ったかによって扱いが分かれる。10万円未満ならその年に全額、10万円以上20万円未満なら一括償却資産として3年で経費にでき、青色申告をしていれば取得価額40万円未満までを一度に経費にできる特例もある。この記事では、少額資産の3つの区分と、青色申告者の特例の要件、個人と法人の違いを、国税庁の記載と条文をもとに整理する。
取得価額がいくらかで、経費にする方法が分かれる
減価償却資産は、買った年に全額を経費にするのではなく、その資産を使う期間にわたって分けて経費にしていくのが原則である(国税庁のタックスアンサー「No.2100 減価償却のあらまし」)。ただし、取得価額が小さいものには、その年のうちに経費にしたり、短い年数で経費にしたりできる例外が設けられている。
どの扱いになるかは、1つあたりの取得価額で決まる。次の表のとおり、10万円・20万円・40万円が区切りになる。取得価額に消費税を含めるかどうかは、自分の経理方式による。税込経理なら消費税を含んだ金額で、税抜経理なら含まない金額で判定する(免税事業者は税込経理になる)。
| 1つあたりの取得価額 | 経費にする方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 10万円未満(使用可能期間が1年未満のものも同じ) | その年に全額を損金・必要経費にできる | 法人税法施行令第133条・所得税法施行令第138条 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として、3年で均等に経費にできる | 法人税法施行令第133条の2・所得税法施行令第139条 |
| 10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満) | 青色申告者は、年300万円まで一度に経費にできる(少額減価償却資産の特例) | 租税特別措置法第67条の5・第28条の2 |
| 上記を超えるもの | 法定耐用年数にわたって減価償却する | 法人税法施行令・所得税法施行令 |
10万円未満は、その年に全額を経費にできる
取得価額が10万円未満の減価償却資産は、減価償却をせずに、その取得価額の全額を、事業の用に供した年(事業年度)の損金または必要経費にできる(国税庁のタックスアンサー「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」、法人税法施行令第133条)。使用できる期間が1年に満たないものも、金額にかかわらず同じ扱いになる。
この区分には、青色申告かどうかという条件はない。白色申告の個人事業主でも、10万円未満のものはその年の必要経費にできる。多くの事務用品や工具、少額のソフトウェアがここに収まる。
10万円以上20万円未満は、一括償却資産として3年で経費にできる
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産は、一括償却資産として、その取得価額の合計額の3分の1ずつを、使った年から3年間にわたって経費にできる(国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」、法人税法施行令第133条の2・所得税法施行令第139条)。耐用年数が何年であっても、一律に3年で経費にできるのが特徴である。
この扱いにも青色申告の条件はない。次に見る青色申告者向けの特例を使えば20万円未満のものも一度に経費にできるが、どちらを選ぶかは利益の出方によって変わる。利益が小さい年は、無理に一度で経費にせず3年に分けたほうが、各年に経費を振り分けられることもある。
青色申告なら、40万円未満まで一度に経費にできる特例がある
青色申告書を提出している中小企業者等は、取得価額が40万円未満の減価償却資産を、その年に全額経費にできる(国税庁のタックスアンサー「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」、租税特別措置法第67条の5)。これを少額減価償却資産の特例という。
取得価額の区切りは、令和8年度の税制改正で引き上げられた。令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満、それより前(令和8年3月31日まで)に取得したものは30万円未満が対象になる。長く30万円だった基準なので、30万円で覚えている場合は、いつ取得したかで変わる点に注意したい。
特例には、次の要件がある。
- 青色申告書を提出していること。
- 中小企業者等であること。基本的に資本金1億円以下で、常時使用する従業員が400人以下(特定法人は300人以下)の法人などが当たり、ひとり法人や従業員のいない個人事業主はこの規模の要件を満たす。
- 平成18年4月1日から令和11年3月31日までの間に取得して、事業の用に供したものであること。
- その年に経費にできるのは、少額減価償却資産の取得価額の合計で300万円まで。事業年度が1年に満たないときは、300万円を月数で按分する。
対象になるのは、器具備品や機械装置といった形のある資産のほか、ソフトウェアや特許権などの形のない資産、中古で買った資産も含まれる。法人は、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表16(7))を付けて申告する。なお、この特例は特別償却や税額控除などと重ねて使うことはできず、10万円未満のものや一括償却資産として処理するものには適用されない。
個人事業主も同じ区分で、特例の根拠は措置法第28条の2
ここまでの3つの区分は、法人でも個人事業主でも考え方は同じである。10万円未満の全額経費と、20万円未満の一括償却資産は、それぞれ所得税法施行令第138条・第139条に定めがある。青色申告者の40万円未満の特例は、法人が租税特別措置法第67条の5、個人事業主は同法第28条の2による(国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)。取得価額の区切りが令和8年4月1日以後の取得から40万円未満に上がった点も、個人・法人で共通する。
違いが出るのは、特例を使うための青色申告の位置づけである。法人はほとんどが青色申告で特例を使いやすい。個人事業主は白色申告だと特例を使えないため、少額減価償却資産を一度に経費にしたいなら、青色申告の承認を受けておく必要がある。
一度に経費にするかどうかは、利益の出方で考える
少額資産を一度に経費にできると、その年の利益を圧縮して税を軽くできる。ただし、経費にする時期を早めているだけで、資産の取得にかかったお金の総額が変わるわけではない。利益が小さい年に無理に全額を経費にすると、翌年以降に残せる経費が減ることもある。どの方法を選ぶかは、その年と先の利益の見込みで決めるのがよい。
会社を作る前後に買ったものは、創立費や開業費として扱える場合もある。その線引きは創立費と開業費の違いで、車のように金額が大きく耐用年数にわたって償却するものは社用車を会社の経費にする仕組みで扱っている。経費にできるほかの項目では、接待や会食の交際費を経費にできるかも参考になる。法人にするかどうかは、見込める利益の大きさから考えるとわかりやすく、個人事業主とひとり法人の損益分岐で試算できる。節税を主な目的に小さく法人を持つ形が向くかはマイクロ法人で、住所を公開せずに会社をつくる方法はバーチャルオフィス比較で確認できる。この特例は期限のある措置なので、どの資産がどの区分に当たるかの判断に迷うときは、取得の前に税理士へ確認しておきたい。
よくある質問
パソコンはいくらまで一度に経費にできますか。
取得価額が10万円未満なら、青色申告かどうかにかかわらずその年に全額を経費にできる。青色申告書を提出しているひとり法人や個人事業主などの中小企業者等なら、少額減価償却資産の特例で、取得価額40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)のものを、年300万円まで一度に経費にできる。
30万円未満ではなく40万円未満になったのはいつからですか。
令和8年度の税制改正により、令和8年4月1日以後に取得して事業の用に供した少額減価償却資産から、取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられた。令和8年3月31日までに取得したものは、従来どおり30万円未満が対象になる。
一括償却資産と少額減価償却資産の特例は、どちらが得ですか。
一方的にどちらが得とは決まらない。特例は取得した年に一度で経費にでき、利益の大きい年に税を軽くしやすい。一括償却資産は3年に分けて均等に経費にするので、各年の経費を分散できる。その年と先の利益の見込みで選ぶのがよく、迷うときは税理士に確認するとよい。
個人事業主でも少額減価償却資産の特例は使えますか。
使える。根拠は租税特別措置法第28条の2で、青色申告書を提出している個人事業主が対象になる。取得価額40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)のものを、年300万円まで必要経費にできる。白色申告では使えないため、特例を使いたいなら青色申告の承認を受けておく必要がある。
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